フォント(書体)について

DS課のWです。

 フォント(書体)について書いてみたいと思います。今回は欧文書体につきまして。

 PCでの作業当たり前になる以前、活字からはじまり、写植となり、1985年にページレイアウトソフト「PageMaker」の販売されるとDesktop Publishing、いわゆるDTPが広まっていきます。

 そこで使われるのがデジタル書体をフォント(Font)となります。

 1986年にリリースされたFontographerの登場でMachintoshで上でフォント作成を手軽に行えるようになり、その優れた操作性から、世界中のタイプデザイナーやグラフィックデザイナーに認められ、今でもオリジナルフォントの作成や外字作成など多くのフォント制作で使用されています。

 英語はデータ容量も軽い1バイト(256種類)言語で表記できるためDTP草創期より多数の書体がPCに付属していたことから書体選択の自由を手に入れることになります。さらにFontographerを使うことでオリジナルの書体の作成が一般の人でも可能になり、映画のタイトルをモチーフにしたものや、あったら便利な記号・サインをまとめたものなど、インターネットの普及もありブームといえるほどのインディーズフォントが巷にあふれていきました。

 そういった、ある種混沌と言えるほどの状況の中から必然的に淘汰、再考が行われ、魅力的なカタログを持っているメーカーのみが生き残っていきます。

 とりわけインディペンデントの中でもアメリカの1984年設立のエミグレ(Emigre)、ドイツの1991年設立のフォントショップ(FontShop)により斬新な書体が立て続けに発表されていきます。

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 エミグレ社は、そしてコンピュータ用に作られたオリジナルフォントを設計する最初のタイプのファウンドリーと言われています。そして1980年代後半と1990年代のかなりの部分を通して、最も最先端と言われる書体のいくつかはEmigreによって開発、リリースされてきます。

 その間同社は書体を紹介する雑誌エミグレ誌(Emigre magazine)発行し、誌面でもそれらの書体デザインの可能性を提示し、またグラフィック表現の斬新さから有名になっていきます。

 日本での使用例、中でも楽天の “Base 9 Sans”、C.C.Lemon の“Triplex Serif”、明治学院大学の “Manson Serif” あたりは非常に有名です。

 2011年1月にはニューヨーク近代美術館MoMAが新たなアート作品としてフォントを加えました。エミグレからKeedy Sans、Mason Serif、Template Gothic、Oakland、Dead Historyの5書体がコレクションに選ばれています。

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 フォントショップ(FontShop)は “デザイナーがデザイナーのためにデザインしたタイプフェイス” というねらいで展開させていきます。また、1991年から2000年の間に、タイポグラフィーの実験用雑誌、FUSEをアートディレクターのNeville Brodyと18号発行しています。

 フォントショップからもFF Meta、FF Blur、FF DIN、FF BeowolfがMOMAのコレクションに加えられています。

 両誌ともが提案したフォント使用の実験が一般紙に広まりデザインにおける可読性論争が巻き起きます。端的に言うと紙面がカッコよければ読めなくてもいいのかということです。デジタルになってハンドリングできる領域が広がったことの功罪ともいえるのではないでしょうか。雑誌「Ray Gun」などが極限まで推し進めた結果ブームは終焉を迎えます。

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 インディフォントの熱気や可読性の論争が落ち着くと、当初、奇抜とも斬新ともいえる書体開発のメーカーという印象を抱かれがちだったエミグレは1990年代後半からは古典回帰の見せ始め、様々な伝統書体の復刻、翻刻を積極的に行い発売し始めました。

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 フォントショップにおけるベストセラー書体FF DINはドイツ工業規格のための書体で、ドイツの高速道路で使われています。FF Metaなどと世界的に大流行し、現在も引き続き多くの媒体で多用されてます。

 新しいものから古いものが再び見直されて豊かな文化が形成されていくといういい例ではないでしょうか。選択肢の多いがゆえに使う者のセンスが問われるのは間違いないですが。