ものがたり

営業部のOです。

ひとりぼっちな一日。こんな何も予定がない時はお気に入りの腕時計を巻き、気分転換によく街歩きに出かけます。黄色い歓声の中心にいるタピオカくんを横目に、裏路地で見つけた赤提灯でホッピー片手にいただく牛スジ煮込みは最高ですね。私はサトイモ派です。
歴史やグルメなど様々なテーマを持って歩き出すと普段とは違う街の魅力や最近の流行物を新発見できるのが楽しみです。

先日は『両国』に降り立ちました。目的は『江戸東京博物館』です。会社役員の方から仕事に通じる面白さがあると聞いて、前々から気になっていた場所です。
視野を広げて知識を深めるのも営業の勉強のうち。今回は社外学習で見てきたものを語ります。

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ペガサス級の未来感あふれる建物。6階の展示室までエスカレーターまで上ると時代は令和から江戸へ。入場してびっくりするのが、徳川家康が江戸幕府を開いた1603年に架けられた日本橋が目の前に広がります。こちらは1800年代前半当時の橋の原寸大レプリカだそうです。橋を渡りきると、賑わっている江戸の住人達(ジオラマ模型)が当時の表情そのままに迎えてくれます。
双眼鏡が完備されており、レンズを通して町を観光できます。人形の表情や着物のシワまで一体一体が細かく作られていて、当時の雰囲気や生活模様がよく伝わってきました。
『粋』な着物をきている住人捜しに夢中になり、全く飽きませんでしたよ。

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江戸が終わると、ついに幕末から明治へとうつり、文明開化が感じられる東京ゾーンへと入ります。こちらでは、現在の平成まで、時代によって東京がどのように変化していったのかがジオラマ模型の他に当時の写真や実際に使われていた実物の資料と共に、時代の移り変わりを体験できます。
平成最後の展示品がなぜメイド服だったのかが気になりましたが、出口付近にある洋食屋(三笠会館)のオムライスが自然と目に入り納得。魔法にかけられていたみたいです。

 

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一通り館内を見て回り、とても印象深く、来てよかったと思えたことがあります。それは、私も夢中になって見ていた粋な着物を江戸中に広めた『三井越後屋呉服店』の歴史を学べたことです。現在の三越の前身でもあります。
調べてみてわかったことは、1650年頃から現在までつづく豪商『越後屋』の商売には、販売方法や販促活動のアイデア、顧客との関係構築など現在のビジネスや生活にいかせるヒントがつまっていました。

有名な話ですが、越後屋は商売の常識を変えた革命児です。
当時の一流の呉服店は、注文を聞いてからあとで商品を持っていく見世物売り、屋敷を訪ねて商品を販売する屋敷売りなど、値段もお得先によって変動する訪問販売が当たり前。また支払いは、盆と暮の二節払いの掛売りが慣習でした。そのため代金を回収できない貸倒れなどで、資金の回転も悪かったようです。

そんな江戸時代におこなった販売革命がこれです。
●店舗での接客販売を行う店前売り!
商人が店舗で顧客と対面し、好みや要望、予算に合わせて商品を提示するという、いわゆる対面販売です。これにより様々な商品を比較検討をしてから購入できるようになりました。また顧客とのコミュニケーションが深まることで信頼関係ができ、更なるニーズを聞き出し、必要な分だけ売る切売りや、買ってすぐに着られる仕立売りが話題を呼んだようです。
●世界初!商品に値札付!
店舗で販売する商品には全て値札をつけました。どの顧客に対しても表示通りの価格で販売し、代金はその場での現金取引の明朗会計に。この販売方法は従来の商品価格の変動や掛売による金利から解放され、顧客に安心感を与えました。
●引札(チラシ)で江戸中にメッセージと娯楽の発信!
木版印刷された引札を配布して、年末安売イベントや新商品の情報などを紹介。
まだ娯楽の少なかった江戸に人気の浮世絵師などに依頼してメッセージ性の強い引札を配布することで、人々の買い物を楽しみをひろげ、集客につなげる。
●ブランドマークの作成!
越後屋を文字ではなく、マークとしてビジュアル可。このマークを看板や暖簾(のれん)、商品を持ち歩く風呂敷などに入れました。これにより信頼の証の越後屋マークとしてブランドイメージが江戸中に広まっていきました。

このように、相手の立場にたった売り方を考え実行したことで、江戸中を魅了した越後屋は町人から「芝居千両、魚河岸千両、越後屋千両」と呼ばれ、一日千両を売り上げるほど繁盛したようです。ちなみに千両箱は、時代により変動するみたいですが、現代の価値にすると約一億二千万円です。

「相手の立場になって考える」このシンプルな原理原則を実践し周りから応援される企業や個人がこの先の時代にも繁栄していくのではないでしょうか。
以前、他社で買った腕時計のベルトだけを買い換えたくて、伊勢丹へ持ち込んだ時の話です。時計も買わずベルトのみ。しかも他社製品‥彼らの全く売上にもならない事に嫌な顔ひとつせず、ウェルカム対応。さらに腕時計談話に飢えている私の喉を潤すサービスまでしていただき、すっかりと心を奪われファンに。こうして感動接客体験をブログにまで書かせてしまう彼らの世界一のサービス精神がものがたっています。

博物館と聞くと、どこか敷居が高く、足をはこびづらいイメージをもつ方がおおいと思います。しかし、体験しながら江戸や東京の文化を感じられる『江戸東京博物館』は、そんなイメージをくつがえす場所でした。ブログでは伝えきれませんでしたが、他にも江戸の出版事情や木版印刷で浮世絵ができるまでの工程など、興味が尽きませんでした。
誰でも楽しめる見所満載の空間に是非立ち寄ってみてください。