印刷用紙の分類と特徴

こんにちは、江戸川工場工務部のMです。今回は印刷用紙について基本的な分類とその特徴について書かせていただきます。

非塗工紙
 抄造後に塗工を施さない紙。上質紙、クリーム上質、書籍用紙が代表的。
 上質紙の特徴
1. 製造会社による性能差はあまりないが、色味には若干の違いがある。
2. 印刷面の光沢が出ず、印刷時の再現色域はコート紙・マット紙などに比べて狭い。
3. インキセット・乾燥に時間が掛かる。
  上質紙主要銘柄;OKプリンス上質(王子)、npi上質(日本)、しらおい(日本)、
          S金菱N(三菱)、ユトリロ上質(大王)、キンマリSW(北越)、
          紀州上質紙N(北越)、雷鳥上質(中越)
 クリーム上質の特徴
  上質紙にクリーム系の色味を持たせたもの。目に優しい色味。
  用途は一般書籍の本文用や、クリーム系の色上質紙の代用等。嵩高紙などもある。
 書籍用紙の特徴
  一般的な書籍の本文用に向いた製品。嵩高紙や古紙配合紙など、種類は多岐にわたる。
 ※クリーム上質や書籍用紙は、紙に色味があるため、カラー印刷すると地の色が影響する
  ことに注意が必要。

微塗工紙
 上質紙・中質紙に薄い塗工を施した紙。
 特徴
1. 再現色域は上質紙よりも広いが、A3コート紙よりは狭い。
2. 紙の表面仕上げがラフなもの(ラフグロス・ラフマットなど)や、嵩高紙など、特徴や種類は多岐にわたる。紙の選定時にはメーカーHPや代理店によく確認願います。

塗工紙
 上質紙等に塗工を施した紙。アート紙(A1)、グロスコート紙(A2),マットコート紙(A2)が代 
 表的。軽量なA3コート紙もあるが、塗工量はA2と比べて少なく、見た目がやや粗め、
 再現色域はA2と同等~やや狭い。また用紙の厚みが薄いもののみラインナップされてい
 るものが多い。
 特徴
1. アート紙(A1)は塗工量が多く、紙面・印刷面に強い光沢を有する。再現色域が最も広いため、鮮やかなカラー印刷に適する。製造会社は少ない。主要銘柄はOK金藤+(王子)、雷鳥特アートN(中越)。
※特菱アート両面N(三菱)は2022年12月に生産終了となるので、早めに他銘柄 
 への変更提案が必要です。
2. グロスコート紙(A2)は紙面・印刷面に光沢を有する。再現色域が広く、カラー写真を多用する本文等に向く。製造会社による性能のばらつきは比較的少ないが、塗工面の色味の違いが若干ある。階調のなめらかさはOKトップコート+が最も優れる。主要銘柄はOKトップコート+(王子)、オーロラコート(日本)、Sパールコート(三菱)、Sユトリロコート(大王)、ミューコートネオス(北越)、雷鳥コート(中越)など。更に特徴を持たせた銘柄(超高白、高白色、嵩高紙など)もあるので、メーカーHPや代理店で確認して下さい。
3. マットコート紙は紙面に光沢が無いのが最大の特徴。再現色域はグロスコート紙より狭くなるため、印刷面はグロスコート紙に比べ落ち着いた感じになる。印刷面の光沢感はニューVマットが最も低い。OKトップコートマットNやユーライト、ミューマットはカラー印刷面の光沢感が強め。主要銘柄はOKトップコートマットN(王子)、ユーライト(日本)、ニューVマット(三菱)、ユトリログロスマット(大王)、ミューマット(北越)、雷鳥マットコートZ(中越)など。メーカーにより、更に特徴を持たせた銘柄(高白色紙;ホワイトニューVマットなど、アイボリー調;FSユトリログロスマットNなど、嵩高紙)があるので、メーカーHPや代理店で確認して下さい。
4. アート紙はインキセット・乾燥が遅い。グロスコート紙やマットコート紙は,銘柄によりインキセット・乾燥時間が異なるが、一般的にはアート紙・上質紙より早い。

板紙
 アートポスト、高級板紙、特殊板紙などの種類がある。
 特徴
1. アートポスト:厚い上質紙にアート紙相当の塗工を施したもの。
2. 再現色域は板紙では最も広い。
3. 高級板紙:厚い上質紙またはマニラボールにグロスコート紙またはマットコート紙相当の塗工を施したもの。
4. 特殊板紙:高級板紙に各種の特性を持たせたもの。厚みがあり加工適性に優れるものや、耐水性を持たせたもの、抗菌性を持つもの等。
5. 板紙は用途により、銘柄別の仕様(片面・両面塗工など)・色味の違い(青みの強いものややや黄色みを持つもの等)が大きいです。各銘柄の詳しい特徴はメーカーHPや代理店に確認し、色味などは用紙見本帳などを確認してください。

印刷用紙を確認するのに役立つウェブサイト・参考書
 まず参考になるのが各メーカーのHPです。印刷用紙の種類、特徴、サイズや連量・入枚
 数などを記載してあります。
 ざっくりした用紙の種類を確認するなら、「紙事典~紙のスペシャリスト」
 (http://www.yayoi-paper.co.jp/)が良いと思います。銘柄名、種類、メーカー名など、様々
 な方法で用紙名を検索できます。
 (株)梅原洋紙店の「紙名手配」(https://www.shimeitehai.co.jp/menu/sh.html)も参考にな
 ります。用紙名や紙の色味などから検索できますが、面白い方法として、紙の印象・イメ
 ージから検索する方法があります。提案等に役立つと思われます。
 日本エディタースクールから刊行されている「印刷発注のための紙の資料」はタイトル通
 り、紙の種類・銘柄・連量・用紙の取り具合・版の掛け方などがコンパクトにまとめられて
 います。2021年版が最新で、用紙名の変更などにも対応してあります。