まだ使っているの?

DS課のAです。

 少し懐かしい話ですが、私が入社した約20年前の三報社印刷の主力編集・組版機は『写研』でした。
 今のパソコンのようなキーボードではなく、『一寸ノ巾…(いっすんのはば…)』に従った特殊なキーボード(写真1AB)を搭載した『SAZANNAシリーズ』という専用機を使って、文字とファンクションの入力をしていました。

undefined

 

 文字の場所を覚えるのには大変苦労しましたが、漢字の読みを覚える必要がなく、打った文字がそのまま出力されるので、変換ミスなどは無く、慣れてくると今のキーボードよりも早く入力ができます。
 那須工場設立から働いている文字入力の猛者たちは、一日でなんと40,000字以上の文字を入力していたそうです。いやはや恐ろしいですね。
 今でも長い原稿を入力する際には『SAZANNA-SW』を使って作業している方もいます。

 「 undefined※1ってどんな意味だったかな?(パッと答えられたら凄い)」と考えてしまう今日この頃ですが、『大量生産できるわけ』の第2回目スタートです。

 那須工場の編集作業では、この懐かしい写研ファンクション(今使っている人ゴメンなさい)が現役で活かされています。
 とは言っても、実際に使っているのは、Windowsの外字エディター※2を使って写研ファンクションと似た文字を作り、写研組版と同じような入力方法をするという形で活かされています。
 下記の例のように入力したテキストを、各アプリケーション専用の『Perl(Script言語)※3』で置換をすると、それぞれのタグに書き出されます。

 

(例) undefined

 

 ①EDICOLORの場合
  <TS NAME="d1">(株)エヌ・アイ・シー</TS>
   あああ<TS NAME="d30">いいい</TS>ううう<TS NAME="d70">えええ</TS>おおお
 ②MC-B2の場合
  <"デ1">(株)エヌ・アイ・シー
   あああ<S デ30>いいい</S>ううう<M デ70 引数="えええ">おおお
 ③InDesignの場合
  <ParaStyle:d1>(株)エヌ・アイ・シー
   あああ<CharStyle:d30>いいい<CharStyle:>ううう<CharStyle:d70>えええ<CharStyle:>おおお

 上記の①②③のように変換されたテキストデータを、各アプリケーションで作成したデータに流し込むと、指定の体裁になります。

 今回お伝えしたいことは、何種類ものアプリケーションを使用していますが、基本的なテキスト編集の方法は同じだということです。
 那須工場では、テキスト変換・加工・修正に専従している社員が40名以上いますので、それぞれにやり方が大きく変わってしまうと、統一性やスピードに大きく影響してしまいます。
 また、組版オペレータが最小限の手数で、綺麗で高品質な組版を仕上げるためには、簡単で統一のとれたタグ付けの作業は、絶対に欠かせません。
 那須工場では一番大人数で、一番大変な工程をどのようにクリアーするかがネックでしたが、写研ファンクションの入力方法が単純で分かりやすく覚えやすいということで、この十数年間で試行錯誤を繰り返しながら、『外字エディター』、『Perl』、『Script※4』を応用して、見事にクリアーしています。
 もちろんMC-B2の『振り分け』や『こま』など特殊な編集もありますが、写研の入力方法を応用していますので、難なくクリアーすることができました。

 実際の写研システムだと、使いこなせる人は限られてしまいますが、専用の組版システムを使い、綺麗で安全な書体、高いクオリティが保証されます。
 DTPシステムが普及して、誰でも使えて何でもできる時代になりましたが、現場泣かせのよく分からないデータもたくさん増えてきました。

 「写研ファンクションなんてまだ使っているの?」と思われるかも知れませんが、那須工場で大量生産するためには、ベストチョイスだと考えます。


※1:ちなみに (undefined「ていさいせいぎょいちばーにーよんさん」と読みます)は写研組版では約物を制御するための指令です。 undefinedは約物制御の指示、最初のundefinedは行頭の約物を半角固定、二番目のundefinedは行中の約物を全角~半角不定、最後のundefinedは行末の約物を全角または半角にするという意味です。みんな覚えているかな?

※2:外字エディターとは、Windowsに標準で搭載されている、オリジナルの文字や記号を作成するアプリケーションです。

※3:Perlとは、文字の検索・置換・並び替えや高度なテキスト処理に強く、シンプルに記述することができるプログラムです。

※4:Scriptを簡単に説明すると、様々な作業の自動化をするためのプログラムのことです。