TPPで著作権がどう変わるか?

総務部のNです。

 現在、日本・アメリカを含む12か国で交渉が進められているTPP(環太平洋パートナーシップ協定)合意によって、出版業界、特に著作権にどのような影響があるのか?まとめてみました。

【変更点①】著作権者の死後50年間保護 ⇒ 70年間保護に延長!
 従来の日本では、著作権者の死後50年間は著作権が有効でした。TPP対応後はアメリカ基準となるため、死後70年間に引き伸ばされるようです。アメリカは「ミッ○ーマウス」の著作権を守るために保護期間を延長に次ぐ延長で死守してきたことで有名です。
 日本には医療や農業など優先的に保護したい産業があったため、著作権法については簡単にアメリカの要求を呑んでしまった…という事情があるようです。
 また、日米はお互いに国際競争力のあるコンテンツ産業(アメリカはハリウッド映画、日本はアニメや漫画ですね)を持っているので利害が一致したとも言えそうです。

【変更点②】著作権侵害を罰するには権利者の告訴が必要 ⇒ 告訴は不要!
 従来の日本では、著作権侵害があっても、権利者が告訴しない限り刑事罰を科すことができない仕組みでした(親告罪)。TPP対応後は、権利者の告訴状が無くても、検察が自由に取り締まることができます(非親告罪)。これにより、違法な海賊版を作っている人を以前よりも簡単に罰することができるようになります。
 しかしながら、この問題については、趣味の範囲でキャラクター商品のリライト活動をしている人も摘発対象となるのか?という点が疑問視されています。こうした2次創作物については従来のように親告罪のままで良いのでは、という議論がなされているようです。

【変更点③】損害の程度に応じて賠償 ⇒ 法定賠償制度が導入!
 従来の日本では、著作権侵害が認められた場合、損害の程度に応じた賠償が科されていました。TPP対応後は、著作権法がより強化され、従来よりも厳しい賠償制度(懲罰的損害賠償もしくは法定損害賠償)を科されます。

懲罰的賠償 … 今後同様なことを抑止するために、実際の損害に対する補償にさらに上乗せした金額を支払うという厳しい賠償制度。

法定賠償 … 損害の程度に応じて賠償額を算定するのではなく、例えば著作権侵害1件で最低○万円の罰金、というように制定法の範囲内で規定する賠償制度。

 アメリカは懲罰的賠償制度に則っていますが、日本には同様の制度が存在しないため法定賠償制度に則るのが現実的ではないか、と言われています。しかし、アメリカが納得するかは未知数なようです。

 

…とまとめていたら、米大統領候補は軒並み「TPP反対!!」だそうです。(2/24 NHKニュース「クリントン氏「TPPに反対日本は円安を誘導」」)

 アメリカにとって、TPPとは対中国、対EU戦略を見据えた経済同盟です。
 万が一ドタキャンとなったら(ならないと思いますが)、アメリカはいよいよ「世界の警官」から「自宅警備員」になってしまうのでしょうか。その時、我が日本国は「世界のATM」から一体何者になっているのか…などと考えつつ筆を置きます。