印刷業界 30年の変遷

営業部のSです。
 
 1回目は、「信頼」は小さな約束を守り続けること。というタイトルでメールに関して書きました。今回はメールを発信する通信機器の今昔について書いてみたいと思います。
 営業歴30年余りは会社の中ではすでに古参社員、古き時代を知る生きた化石ともなりかねません。スマホ世代の若い社員に、活版印刷から現在のCTP印刷までの変遷を兼ねて過去の経験を元に紹介します。

30年前はポケベルだった。
 30年前の当社の活版印刷とオフセット印刷の比率は60:40程。まだ活版印刷が元気な時代です。一文字づつ活字を組むのは職人技、得意先の編集者に組版指導するほど職人気質あふれるころです。オフセット印刷は写研電算組版のみでMacintoshはまだありません。電算組版→フィルム製版→フィルム刷版→オフセット印刷の流れがやっと確率し安定してきました。活版からオフセット印刷へと移行していく時代です。
 携帯電話のないこの時期の営業ツールはポケベル(ポケットベル)。ガラケー携帯の半分ほどの端末から「ピー・ピー」と音がなるだけです。会社からの呼出しには公衆電話を探して連絡をいれなければなりません。公衆電話の場所は頭に入っていますが、どんなに急いでも30分〜1時間位はかかります。そのため用件は余程の連絡事が主で、呼出しも一日数回でした。今はほとんど姿を消したテレフォンカードをよく使いました。

20年前、PHS/携帯電話の出現。デジタルデータへの対応。
 活版印刷の比率が激減。新刊は全てオフセット印刷となります。組版はまだ電算組版が主流です。編集者からテキストデータの入稿が増え、またデザイン関係からのMacintoshデータにも対応しなくてはなりません。Illustrator、Photoshop、組版ソフトではPagemaker、QuarkXPressなどが入稿しました。新システムもまだまだ頼りない時期です。出版社もOA化の過渡期。一人一台のPCを目指すなど環境整備に追われていました。
 営業ツールはPHS携帯電話が普及し、ポケベルから画期的な変革を迎えます。しかし通信状況は弱く通話が繋がらない時や切れてしまうこともしばしばでした。用件は社内連絡事がほとんどです。

10年前、デジタル化。DTP組版の多様化。CTP印刷。
 デジタル化の波が押し寄せ、DTP組版が主流となります。印刷所専有の写研電算組版に変わりMacintoshによるDTP組版がオープン化。誰でもオペレーターです。トレス屋さん、デザイナーさん、編集プロダクションさん、そして出版社さん自ら組版をする時代となりました。PCの高性能化により画像処理もスムーズ。オフセット印刷ではDTP化によりフィルム刷版からCTP刷版に移行していきます。DTP組版→CTP刷版→オフセット印刷の確立です。また電子書籍の動きも見逃すことはできません。
 500年続いた活版印刷はすでに姿を消し、CTPオフセット印刷への技術革新は激流のごとしです。印刷の形態はほぼ完成と言って良いでしょう。そしてここでPOD (オンデマンド印刷) が台頭してきます。
 さて営業ツールの携帯電話は問題なく使えますが、通話のみでメールまでは及びません。メールのやりとりは社内PCが主です。社内PCによるメールやデータ対応が徐々に増えていきました。

5年前、スマホが主流に。
 組版ソフトはInDesignが主流。先方データ支給の案件が増えてきました。誌面のビジュアル化に伴い、2色刷り4色刷りが増えていきます。
 営業ツールはガラケー携帯からスマホに変わりました。通話はもちろん、メールによる社内連絡、得意先や下請けとの業務確認など欠かせないものとなっています。かつてポケベルは、あくまで社内連絡用ツールでした。今やスマホは名刺にも携帯番号を記するほどのコミュニケーションツールです。印刷技術と共に革新的な進歩をとげました。得意先から直接かかってくる案件、現場からの確認事項など、営業への通話回数やメール受信は激的に増えてきたのです。

最後に
 10年単位で大まかな動きとしてまとめました。稚拙ですが過去30年の変革をおわかりいただければと思います。印刷会社でも若い世代は活版印刷を知りません。現在の印刷技術や通信手段などを当たり前としています。
 このようなほぼ完成された設備、環境が充実すれば最後に残るのはやはり人材ではないでしょうか。DTP組版、CTPオフセット印刷、そしてスマホに関わるネットパワーを使うのは人間です。合理的・効率的になった分、それを上手に使いこなすこと。そして現場力、営業力を強くするためには、社員の教育・育成がこれから増々のキーポイントになるのではないかと考えています。