デザインの依頼に必要な事

編集部のBです。

私の部署では、表紙・カバー等の装丁デザイン、本文のデザインなどを主に承っております。
出版社様によってご依頼の方法は様々ですが、デザインをお願いしようと思うけれど、デザインなんかした事が無いから何を伝えれば良いのかよくわからない。そんな時に参考になればと思い、私見ではありますがそこに触れてみようと思います。

『デザイン』という言葉は便利ですが、実際の意味はあいまいな所が多いと思います。『美術・芸術』と混同されがちですが言葉の意味を調べてみると

  1. 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。
  2. 図案や模様を考案すること。また、そのもの。
  3. 目的をもって具体的に立案・設計すること。

上記のように「実用」とか「設計」といった言葉が出てくるのです。
美術的な、感覚的な物と捉えている方も多いようですが、ターゲットに向けてのアプローチをより効果的に構成し、ビジュアル化するものだと私は捉えています。ですから、デザイン依頼ではその本の内容で大事な部分はどういった所なのかなど情報を教えていただくことが、実はとても大事です。
ですので情報を整理することから始めてみましょう。

1. 本の内容
そもそもどういった内容かをまとめてみます。どういうニーズを考え企画されたのかや、その本で伝えたい内容など。例えば「貴重な症例を写真と共にまとめた希少書」「スタッフが判断に迷いがちな分岐や考え方を、フローチャートで見やすくまとめたガイドになる本」等々。

2.ターゲット
1でまとめた内容の本のターゲットは誰(どこ)になるでしょうか?
例えば医療従事者、専門医、研修医、コメディカルスタッフ、一般…
そしてその年齢層・男女比まで掘り下げられたら最高です。

3.競合書
1・2を踏まえて、競合になる相手はどこの誰(何)でしょう?
競合書としてどのような本が、どのようなビジュアルで並んでいるのかは気にしない方が無理ですよね。

4.現状分析
1〜3を踏まえてその本が差別化されるポイントは何なのかや、改訂版などベースとなるものがある場合は現状の問題点を分析してみます。また、考えていたアイデアが的を得ていそうかどうかなども分析のひとつと言えると思います。

こうして1〜4の情報をまとめ、アピールの方向性を絞ります。最終的なコンセンサスを取らなければならない相手に「なんとなくこんなものを作ります。」という伝え方と、「1〜4の情報を踏まえ、こういったものを作ります。」というのでは説得力が違います。

クライアントからここまで情報をご提供いただいたら、デザイナーはそのアピールをビジュアル化していきます。

いかがでしょうか? デザインの入り口は色や形より前に情報にあります。依頼する為には「美術ができる」必要は無く、「情報を整理する」事が大切ですので、あまり構えずとも誰にでも出来うる事と捉えていただきたいです。
もちろん考え方は多種多様にありますので、その中の一例としてご参考になれば嬉しいです。